The story of
MORINO CAMP BASE

「大地の再生」の手法を用いてよみがえらせた
環境に寄り添うキャンプ場

「大地の再生」の手法を用いて

よみがえらせた

環境に寄り添うキャンプ場

ここはその昔、海の家の裏山でキャンプ場として使われていた場所だった。使われなくなってから数十年の月日が流れていた。
横浜のバスバー時代のお客さんからの「昔のようにバスでお酒を飲みたいけど、車で来ると飲めないから、泊まれる場所があるといいな」という声がヒントとなり、「裏のキャンプ場跡地を再び整えればなんとか泊まれるようにできるのでは。」と、キャンプ場づくりに取り掛かることにした。意外に思われることも多いが、キャンプ好きだからでも、キャンプブームだからでもなく、そこに適した場所があったから作ってみたというのが実情だ。

この敷地、当初はいつもジメジメとし、常にぬかるみがあり、イノシシが泥浴びをしに来ることもあった。ツル植物も蔓延り、蚊も多く、鬱蒼としたなんとなく近寄りがたい印象だった。

整えていくにあたり、以前から気になっていた「大地の再生」の手法を取り入れてみることにした。ちょうど、身近で大地の再生を実践する庭師の友人と知り合え、その作業を手伝いに行って学んだり、アドバイスしてもらえたりと、バッチリなタイミングでもあったのだ。

大地の再生の考え方では、土の中の水と空気の流れは、人体でいう血流のようなものと捉えられている。血流が悪くなると、人も大地も調子を崩す。だから、大地を再生するには、血管のつまりを取り除き、血流をよくする必要があるのだ。

まず、滞留している水と空気の流れを改善するために、「水脈」と呼ばれる溝を掘っていく。支点となる場所やその間々にも「点穴」という縦に深い穴を掘り、土の深い層にも流れを巡らせる。そしてその水脈に「しがらみ」と呼ばれる、泥や土で塞がらずに空気や水をゆるやかに通す、枝や竹でしっかりと組まれた構造体をつくり、炭や土などを入れ微生物が住みやすい場所にする。

このような手法を施し、水と空気が滞ることなく循環するようになったことで、すぐにこの場所に変化が見られた。ぬかるみがなくなり、イノシシが来ることもなくなった。大雨の後でも水たまりができなくなった。湿度が減り、蚊も減って、何より空気が気持ちよくなったと感じた。ここでも廃材を活用して設備を整えていき、2021年春、1日1組限定・完全予約制というかたちで「森のキャンプベース」をオープンした。

このキャンプ場では自然に寄り添い、環境への負荷を減らすためのルールをつくっている。合成洗剤と歯磨きペーストの使用を禁止する代わりに、洗剤が必要な方には、米ぬかと微生物でつくられた洗剤を用意している。洗い終わった後の水を土に流すと、その土を微生物たちが調えてくれる洗剤だ。洗い物の汚れは水で流す前に拭き取るなど、洗剤を大量消費しないような工夫もお願いしている。

トイレは落ち葉を使用したコンポストトイレを作った。微生物での処理能力を考慮して、キャンプ場の利用人数を設けてもいる。

このようなルールに則ってキャンプ場を利用することで、お客さんが環境に配慮することに興味を持ってくれ、本来の意味での自然に抱かれる体験を楽しんでもらえているのが嬉しい。